
ノベルワークス

「この数量だと、曲げに何日かかるんだっけ」
「前に同じ品物を作ったときの日数が、すぐに出てこない」
「納期を聞かれたけれど、工場に確認するまで答えられない」
見積を出すとき、こんなふうに手が止まった経験はないでしょうか。
ベテランなら、品名と数量を聞いただけで「3000個なら、曲げと組立が延びるな」と見当がつきます。
でも、その感覚は担当者の頭の中にしかありません。
見積段階での納期や工数の見立ては、単なる計算作業ではありません。「一日でも早く目安を伝えてお客様を安心させたい」という営業の誠意と、「無理な日程を組んで工場の仲間を疲弊させたくない」という現場への配慮。その両方を成り立たせるための、大切なおもいやりのバランス感覚です。
私たちがお届けしたいのは、単に計算の手間を省くだけの効率化ではなく、お客様と自社の現場双方に向けたそうした配慮の心をテクノロジーで形にする「おもいやりDX」です。
過去の製造実績から得られた工場の実感を大切にしながら、素早く確かな目安を導き出す。kintoneのAIエージェントに任せると、見積書を登録するだけで、過去の製造実績と工程マスタから工程ごとの工数と完成日の目安を出し、見立ての根拠も添えてくれます。ただし、完了した案件の工程ごとの日付や標準時間が kintone に記録されていることが前提で、お客様に答える納期は人が決めます。
この記事では、kintone の見積書で、工数と納期の目安の見立てを AIエージェントに任せたところを、実際の画面と動画で紹介します。
この記事でわかること
見積書を登録したあと、AIエージェントが kintone の製造実績と工程マスタから何を読み取るのか
同じエージェントでも、過去案件の数と数量しだいで「前回の実績どおり」と「曲げと組立の延びを見込む」に見立てが分かれる理由
人が承認するまで書き込まず、見積書そのものの欄も変えない、提案と承認の流れ
見積に工数と日程の目安を添えるには、本来こんな手順が必要です。
引き合いを受けて、kintone で見積書を作る
同じ品物を過去に作った案件を探す
そのとき、工程ごとに何日かかったかを読む
数量の違いで、どの工程が延びるかを考える
工程マスタの標準時間から、工数を計算する
着手日と完成日の目安を決めて、回答する
生産の記録、工程マスタ、過去の見積書。
アプリをまたいで数字を突き合わせ、数量に合わせて計算し直すには多くの手間と時間がかかります。
即座の回答を求められる日々の引き合いの中で、すべての案件でそこまで詳細に積算するのは容易ではありません。
結果として、前回の数値をそのまま参照するか、万が一の遅延を防ぐために「工数を多めに見積もる」という対応にとどまりやすくなります。
担当者がするのは、いつもどおり見積書アプリにレコードを登録することだけです。
担当者が、見積書を登録する
エージェントが動き出し、過去の製造実績と工程マスタを調べる
工数・日程・見立ての根拠をまとめて、提案する
人が中身を確かめて、承認する
工数見積が作られ、見積書にコメントが残る
ここからは、実際の画面で順に見ていきます。
※以下すべての画像はダミーデータです。
宛名、型番、数量を入れ、備考に「工数と日程の目安を添えて回答する」のような一言を書いて保存します。
ここまでは、エージェントがいなくても毎日している作業です。

エージェントは、型番が商品リストにあるかを確かめます。
それから、生産進捗管理で同じ品物の完了した案件を探し、工程ごとにかかった日数を読みます。
完了案件が複数あれば、今回の数量に一番近いものを選びます。
見積数量2800に最も近いのは製番422004(数量3000、差200)です。
工数は、工程マスタの標準時間と今回の数量から計算します。
案件の選び方、計算のしかた、着手予定日を見積日の7日後とすることは、あらかじめエージェントへの指示に書いておきます。

調べ終わっても、エージェントはいきなり書き込みません。
何を調べて何がわかったか、どこに何を書き込むかをまとめて、承認待ちになります。
見積書そのものの欄は変えず、工数見積アプリへの追加と、見積書へのコメントだけを計画しています。
人が中身を見て「承認」を押すと、はじめて書き込まれます。納得できなければ「却下」もできます。

承認すると、工数見積アプリに1件追加されます。
工程ごとの段取り・加工・工数・見込み日数、合計工数、着手予定日と完成予定日、そして見立ての根拠が入ります。
見積書には、合計工数と日程を知らせるコメントが1行残ります。
(過去の類似案件をもとにした見込みであり、納期を確約するものではありません)

同じエージェントに、条件の違う2つの見積を登録してみました。
※動画と画面に出てくる会社名などは、サイボウズ社が提供する kintone のサンプルアプリのデータと、デモ用に作った架空のデータです。実在の企業・団体とは関係ありません。
追加注文の見込み。工数と日程の目安を添えて回答する
量産の引き合い。納期の目安を添えて回答する
どちらも、目安を添えて回答したいという、よくある見積です。
それでも、過去の製造実績をたどると、見立て方ははっきり分かれました。
電源ユニット基板 | オイルシールリング | |
|---|---|---|
今回の数量 | 700個 | 2,800個 |
完了した過去案件 | 1件(700個) | 3件(1,500個・2,000個・3,000個) |
選んだ案件 | 数量がちょうど同じ700個の案件 | 数量の差が一番小さい3,000個の案件 |
見込み日数 | 各工程とも7日 | 曲げ11日・組み立て14日 |
合計工数 | 49.2時間 | 178.7時間 |
完成予定日 | 12月11日 | 12月15日 |
見立て | 前回の実績どおりに見立てる | 曲げと組立の延びを見込んで見立てる |
結果だけでなく、見立ての中身にも見どころがあります。
電源ユニット基板の件では、完了した案件が1件しかありませんでした。
数量はぴったり同じなので、その案件の日数をそのまま使っています。
そのうえで、見立ての根拠に、確かめられなかったことを書いていました。
比較対象となる過去案件が1件のみのため、数量差による工程日数の延びは検証できていない。
今回の数量は過去実績とちょうど同じ700個であり、実績に近い条件での見立てだが、他の数量帯(大幅な増減)での延びは未確認。
前例が少ないことを隠さず、どこまで言えるかを区切っています。

オイルシールリングの件では、完了した案件が3件ありました。
エージェントは3件を数量の順に並べ、工程ごとに日数の動きを読んでいます。
曲げと組立は数量が多い案件ほど日数が延びる傾向(1500個で7/9日、2000個で8/11日、3000個で11/14日)。
バラ・切断・外観検査は数量差との明確な相関は見られない。
どの工程が数量に効くかがわかれば、工場と相談するときの話も早くなります。
オイルシールリングの見立てでは、3,000個の案件の日数を使っています。
今回は2,800個なので、少し多めの案件に合わせたことになります。エージェントは、そのことも書き添えていました。
今回の数量2800個は製番422004(3000個)に近いがそれでも下回るため、見込み日数はやや長めに出ている可能性がある。
完了案件は3件のみで、いずれも2800個台の実績が無い点に留意。
見立てを受け取った人は、どちらに寄せて読めばよいかがわかります。

工数は、工程マスタの標準時間に数量を掛けて出しています。根拠の欄には、その式の例まで書かれていました。
例: バラ=0.3×700÷60=3.5h
見積書へのコメントの最後には、どちらの件でも「納期を確約するものではありません」と添えられていました。
(過去案件1件を根拠とした見立てであり、納期を確約するものではありません)
どこまでが実績で、どこからが見込みかが、回答する人にも伝わる書き方です。
工場に聞く前に、目安が手元にそろう:このデモでは、登録して1分もしないうちに、工数と日程の見立てが届きます。
ベテランの感覚だけに頼らずに済む:「この数量なら曲げと組立が延びる」を、過去の製造実績から読み取ってくれます。
見立ての確かさがわかる:前例が何件あったか、どこが未確認かが、根拠の欄に書かれます。
お客様に答える納期は見積担当が決める:見立ては承認待ちで届くので、根拠の欄を読んでから承認するか却下するかを決められます。
次のうち、当てはまるものはありますか。
見積書や生産の進み具合を、kintone に記録している
工数や納期の目安が、見積を作る人によってばらつく
「前に作ったときは何日かかったか」を、記憶や聞き取りに頼っている
工程ごとの標準時間や、過去の案件の工程日数が記録として残っている
2つ以上当てはまるなら、AIエージェントに任せられる余地があります。
承認されるまで書き込みません。エージェントは書き込む内容をまとめて承認待ちになります。承認したあとも見積書そのものの欄は変えず、工数見積アプリへの1件の追加と、見積書へのコメントだけの設定にしています。どのアプリに何を書けるか、承認を挟むかは、エージェントの設定で決めます。
動画1の電源ユニット基板の件では、完了した案件は1件だけでした。エージェントはその案件の日数で見立てたうえで、「比較対象となる過去案件が1件のみのため、数量差による工程日数の延びは検証できていない」と、言えないことを根拠の欄に書いています。
動画2のオイルシールリング 2,800個の件では、完了した3件のうち数量の差が一番小さい3,000個の案件を選びました。そのうえで、多めの案件に合わせたため見込み日数が「やや長めに出ている可能性がある」ことも書き添えています。
このエージェントが使っているのは、どれもすでに kintone にたまっていた記録です。
商品リスト、生産の進み具合、工程マスタ。
「作り終えたらおしまい」になりがちな記録が、次の見積の見立てを支える材料として生きてきます。
完了した案件が増えるほど、エージェントが比べられる前例は増えていきます。
まずは、作り終えた案件の工程ごとの日数が、kintone にどこまで残っているかを確かめるところから始めてみませんか。
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